中学生がプチ・ラパンで職場体験をしました(2018年)
京都府の長岡京市では毎年11月の第一水曜日からから3日間、4中学一斉に2年生を対象として職場体験が実施されます。プチ・ラパンでは男女問わず1名だけを受け入れています。今年は初めて男子生徒一人、それもじゃんけんで負けての決定だったそうです。
2018年の職場体験の様子
①調理補助
プチ・ラパンでの職場体験はあくまでもお店のスタッフとして実施します。ですので、学校の制服やジャージではなくコックコートで仕事をします。シュークリームの皮の作製、シュークリームのクリームの作製、クリーム詰めをメインとして今年は時間が少し余ったので、マドレーヌの生地を作って袋詰めをしました。3日目には自ら作ったシュークリームをもって販売しました。
②賄いの作製
自分の食べる食事は自分で作ります。
1日目はトマトソースを作ってトマトパスタとサラダ。サラダの味付けはボールで塩、胡椒、ワインビネガー、オリーブ油で行います。分量はありません。
2日目は親子丼。画像にある通りご飯は鍋で炊きます。包丁の扱いにはかなり難がありましたが、味付けのセンスはまずまず。おいしくいただきました。
3日目はご褒美で私が担当。このほかにも休憩時にはドリップでコーヒーを入れたり、リーフで紅茶を入れたりもしてもらいます。
③総評
普段調理をしていない割にはセンスがよく、何でも無難にこなしていました。何も指示をしなくても、手が空いたら洗い物を自ら進んで片付けたり、少し難しい仕事もとにかくやってみる姿勢が素晴らしかったです。この体験がいつか働くときに何かの役に立ってくれればと思います。
『職場体験』のプチ・ラパンの考え
どうして一人しか受け入れないのか
まず根本的なコンセプトとして、「学校で体験できないことをする」を設定しています。学校ではおそらく「仲間と協力して事業を達成する」という事が中心かと思います。ところが私の経験から考えますと「社会に出ると誰も助けてくれないし、自分の面倒は自分で見なくてはいけなくなる」という事にぶつかるのではないでしょうか。「誰も助けてくれない」は言い過ぎかもしれません。「助けてくれる人はいるが、自分でSOSを発しないと勝手には助けてくれれない」ですよね。
ですので、プチ・ラパンに職場体験に来た生徒さんは、誰に頼ることもなく自分に与えられた課題を自分で解決しなくてはいけません。一度二人を受け入れたことがあるのですが、そうすると「どちらかがやればいい」という心のスキが出てしまい、仕事が雑になっていしまいました。例年に比べると学べたことも少なかったように思います。
ご家庭でのケーキ作りとの違いを体験する
今年は男の子でしたので、お菓子はもちろんお料理のお手伝いもほとんどした子ことがないという生徒さんでしたが、女の子の場合パティシエに憧れて自宅でもよくケーキを作る子たちがいます。しかし、ご家庭でのケーキ作りと菓子屋のケーキ作りは全くの別物で、皆さんの想像以上に体力も腕力も知力も必要な職場です。少し古い言い方をすれば3K、今風に言えばブラックな職場環境が多い業界なのです。
職場環境に関しては多くのお店が改善に取り組んでいますが、ご家庭でクリームを4人分作るのと職場で100人分作るときの必要な体力や腕力の差は変わりません。ですのでプチ・ラパンに体験に来た子供たちは私が毎日作っているのと同じ仕事をします。もちろんお客様に提供するものです。そうでないと単なる調理実習になってしまうからです。
仕事を完結させる
菓子屋の仕事は生地を作り、クリームを作り組み立てるといった工程を経ることが多いですし数人職人さんのいるようなお店では分業制になっています。しかしそれでは作業の全体像が見えませんので、職場体験の3日間の間に、シュー皮を作り、クリームを炊き、皮にクリームを詰めて販売できる状態にすることをすべて行います。そのことで食材から商品になるまでの工程を理解していただきます。
また、プチ・ラパンは工場ではなく菓子屋ですので商品を作っただけでは商売になりません。買ってくれる人がいて初めて自分の給料が確保されるのです。このことは大人でも勘違いされる方が多く、会議をしたから仕事をしたから自分が動いたから対価がほしいという方がいます。サラリーマンならまだしも私たち個人事業では買ってくれる人がいなければ仕事はしていないのと同じことなのです。ですから、職場体験の子供達にも最終日に自分で作ったものを自分で売るという事をしてもらいます。声を出して集客し、自分が汗をかいて作った商品をその経験をもとに自らの言葉で売り込んで、対価を自らの手で受け取る。これで仕事の完了です。
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